エチオピアの建築史、特に古代アクスム王国の壮大な遺跡群に焦点を当てた傑作、「Yesterday’s Shadows: An Architectural Odyssey Through Ancient Axum」をご紹介します。本書は単なる建築ガイドではありません。それは、古代アクスム文明の栄華と衰退を石造りの遺物を通して辿る、歴史と芸術が織りなす壮大なオデッセイです。
著者であるエチオピア出身の建築家兼歴史学者、テフェル・ワッセは、独自の視点でアクスム王国の建築様式を分析し、その時代背景や文化的意義を深く掘り下げています。彼の筆致は、まるで古代アクスムの遺跡を目の前にしているかのような臨場感に満ち溢れています。
アクスム:石と太陽の王国
アクスム王国は紀元1世紀から7世紀にかけてエチオピア北部を支配した強力な王国でした。彼らの建築様式は、近東の影響を受けながらも独自の進化を遂げており、壮大な石造りの建造物や精緻な彫刻で知られています。
本書では、アクスム王国の代表的な遺跡である「アクスムのオベリスク」、巨大な石碑「ステlae」、そして王家の墓地である「トゥル・コフ」などが詳細に紹介されています。それぞれの遺跡について、その構造、歴史的背景、文化的意義が丁寧に解説されており、読者はアクスム文明の栄華を垣間見ることができます。
建築様式の解明:技術と美の融合
アクスム王国の建築様式は、当時の技術力を示すだけでなく、彼らの宗教観や社会構造も反映しています。本書では、石材の選定、加工技術、そして建築のデザインについて詳細に解説されており、読者は古代アクスム人の卓越した技術力と美的センスを深く理解することができます。
例えば、「アクスムのオベリスク」は、高さ24メートルを超える巨大な石碑で、その重量は約160トンにも達します。このような巨石を加工し、垂直に立てる技術は、当時のアクスム人が優れた建築技術を持っていたことを示しています。
また、アクスム王国の建築様式には、近東の影響が見られます。例えば、「ステlae」の装飾には、ペルシャやギリシャの芸術様式が取り入れられています。しかし、これらの要素はあくまでアクスム独自の解釈と表現を通して融合されており、独自性を持つ建築様式を形成しています。
「Yesterday’s Shadows: An Architectural Odyssey Through Ancient Axum」: 読み応えのある旅
本書の魅力は、建築技術や歴史的な背景解説だけでなく、美しい写真やイラストにもあります。古代アクスムの遺跡が鮮明に描かれており、まるでその場に足を踏み入れたかのような臨場感を味わうことができます。
また、著者であるテフェル・ワッセの文章は、読みやすく、建築史初心者にも理解しやすいように書かれています。しかし、同時に専門的な知識も織り交ぜられており、建築史やエチオピアの歴史に興味のある読者にとっても、深い学びを得られる一冊です。
まとめ:
「Yesterday’s Shadows: An Architectural Odyssey Through Ancient Axum」は、エチオピアの古代建築を深く理解するための必読の一冊です。石造りの遺跡を通して、アクスム王国の栄華と衰退、そして彼らの卓越した技術力と美的センスを体感することができます。本書を読み終えた後は、エチオピアの建築史への興味がさらに深まることでしょう。
書籍詳細:
タイトル | 著者 | 出版社 | 出版年 |
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Yesterday’s Shadows: An Architectural Odyssey Through Ancient Axum | テフェル・ワッセ | エジプト考古学会出版社 | 2018年 |